認知症でお悩みの方へ
認知症の方の気持ち認知症の方の中には、自分が認知症であるということを自覚されていないケースがあります。自分で「ぼけた」というときでも、本当に自分の状態を理解されていないこともあり、半ば謙遜したり、周りからいつも言われていることが口癖のようになって、言ってしまうことがあります。
また、自分の衰えなどに対する不安などで心理的に不安定な状態になり、自分の失敗を自分じゃないと言い張ってしまったり、あるいは感情をコントロールする機能が低下するために、ちょっとしたことで怒ったり泣いたりするということもあります。
また、周囲との意思の疎通が困難なときには、認知症の方も健常者と同じようにどこかもどかしく思ってしまうものです。それだけに感情面が研ぎ澄まされ、相手の好悪の情に敏感に反応することもあります。そして、相手に良く思われていないことを不満に感じ、相手が興奮していることに興奮し、そんな自分にさらに興奮してしまうという悪循環を招きかねません。認知症の方が不安や動揺や嫌悪を感じるのは、実は介護者のそれを感じているせいなのかもしれません。
認知症の方も健常者とまったく同じように、ものを見て、感じて、思っています。認知症の方の心に寄り添った対応を心がけることが大切です。
認知症の方は、記憶の障害により過去と現在、現在と未来を記憶の絆でうまくつなぐことができません。そのため頭の中は、過去を省みることができない不安、未来を予測できない不安でいっぱいです。それを理解できない介護者は、「昨日も言ったでしょ!」、「そんなことしたら、明日、困るでしょ!」と認知症の方の頭の中に存在しない過去、未来を持ち出して、叱ってしまいがちです。すると、不安から怒り、うつといった様々な行動・心理症状(BPSD)が現れてきます。認知症の方が認識している「現在」を心地よくすることこそが、暮らしを心地よくすることにつながるのではないでしょうか。